東京建物株式会社は、2024年9月7日~10月27日の期間に「BAG-Brillia Art Gallery」にて、メディアアーティスト・落合陽一氏の個展『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン(ひるよるの あいかわるわきも かみほとけ すしぬる ゆえに うなぎどらごん)』の開催を発表しました。
江戸時代の宗教的空間を考察し、落合氏が長年追求してきたデジタルネイチャー・計算機自然という哲学体系を基盤に、時間と空間の循環的な性質を探求する展覧会です。
そして、開催に先立ってメディア行われた内覧会では『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン』を拝見させていただいたほか、落合陽一氏のトークショーならびに製作過程やその想いを語っていただきました。
左から、東京建物 小澤克人氏、落合陽一氏、東京建物 秋田秀士氏
落合陽一の個展『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン』開催
江戸の文化を受け継いできたYNKエリア
東京建物株式会社 代表取締役専務執行役員 小澤克人氏より、本個展の開催の経緯や取り組みについて説明がありました。
本個展が開催されるエリアは、八重洲(Yaesu)・日本橋(Nihonbashi)・京橋(Kyoubashi)の八日京エリアの頭文字をとって、通称「YNK(インク)エリア」と呼ばれています。
東京建物と落合氏はこれまでにも大手町タワーでの『nullの木漏れ日』などの展示も行っており、YNKエリアでの生活にアートが根付かせるための取り組みを行っており、今回は江戸時代からの文化芸術と落合氏によるアートの解釈を融合させた形で個展を開催。
さらに、
「YNKエリアの頭文字はYou Never Know“やってみなければわからない”というマインドを重ね合わせて街づくりを行っている。」
という東京建物の理念も伝えました。
そして当時のYNKエリアについて遡り、
「江戸城を取り囲む城下町には約100万人の商人が集まっており、世界でも類を見ないほどの人口密集都市だった。」
と、江戸は世界随一の都市であったと説明しました。
ものづくりの職人や浮世絵師などたくさんの人がこの地に居住されており、ものづくりや芸術などの文化が盛んなエリアでもあったという当時のYNKエリア。
そして食についても、手軽なファストフードとして屋台の寿司屋・蕎麦・鰻などが考案され、江戸を代表する食文化として発展してきたエリアでもあるそう。
幾多のイノベーションを繰り返し、老舗とグローバル企業が共存し、伝統文化が商人や町人によって受け継がれてきたと説明しました。
落合陽一によるトークショーも開催
落合陽一氏は、ドラゴンがあしらわれたシャツを着用してご登壇されました。
「脈々と受け継がれてきた文化と共に、落合氏には時空を超えた空間を作り上げていただいた。」と小澤氏が作品を評価。
落合氏はテーマとして「江戸の宗教的空間や江戸の宗教的構造に興味があった。」と話し、
「アーティストというのはホワイトキューブの中で、何を置くかというのが問題になってくる。ビデオワーク、彫刻、油絵などがある中で『寿司屋と鰻屋』を作品として置いた。」
と話し、
「昔は生け花や盆栽、彫刻など生活の中に芸術があったが、現代にはそういったものが少なくなってきている。生活の中で地続きでアートがあることが素敵だと感じているので、そのような空間を創った。」
と続けて語っています。
『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン』
この度、本個展の展示会場へ伺ってきました。
展示エリアは鰻屋と寿司屋の2ヶ所。
どちらも洗練された門構えで、どのような展示となっているのか期待が膨らみます。
まずは鰻屋へ
最初は鰻屋からお邪魔することに。
中に入ると、おしゃれな飲食店と間違えてしまいそうな佇まいとなっています。
まず圧倒的な存在感で出迎えてくれるのが『鰻龍(うなぎドラゴン)』。
鰻屋の御神体・神仏習合の象徴として鎮座しています。
能装束は竹生島(ちくぶしま)龍神が明治に千葉の佐倉市・肴町に購入された時のものを纏っており、なんと145年ぶりの里帰りとのこと。
まさに現代と過去の時間の縦軸を行き来できるアートとなっています。
数分おきに昼夜が変わる空間では、あらゆるものの見え方が変化。
このほかにもデジタルネイチャーを活かした様々なギミックが施されている展示会場。
そして鰻屋へ。
こちらは当時の生活の匂いが漂う空間。
江戸の頃には一般的であったであろう鰻屋がこの現代に姿を現すと、一つ一つのものに芸術や神秘を感じさせます。
この法被は当時の火消(消防官)の方から代々受け継がれてきた貴重な法被。綺麗に保存されていて、とても大事に受け継がれてきたことがわかります。
鰻屋の中で、落合氏に記念写真を撮影させていただきました。
IBMの古い計算機を撮影してプラチナプリントにした展示でも、現代の技術との融合に落合氏の感性を体感できます。
続いてお隣の寿司屋へ
お次は寿司屋へ。
会場内は寿司屋と見間違うほどの造り。
現代的な寿司屋でもありつつ、江戸を感じさせる板前です。
落合氏は製作にあたって、自身で老舗店舗の方や職人の方と約一年のリサーチを行い、その情報をもとに自身の解釈と融合させて製作していったそう。
そのリサーチに協力してもらった、日本橋𠮷野鮨本店五代目 𠮷野正敏氏との2ショットも撮影させていただきました。
寿司屋を抜けて奥へ進むと、デジタルネイチャーを駆使したアート作品の展示もあり、見応えがあります。
落合氏は「現時点での完成度は8割。会期中に100%になる。」と話し、今後見るたびに展示会場が変わっていくかもしれません。
それは観察者の視点が変わるのか、来場者によって変化がもたらされるのか、その未知なる変化も楽しんでいると語った落合氏。
記事を書いておいて本末転倒なことを言うようですが、アートは実際に足を踏み入れて体感し、各々それぞれのことを体感すべきだと私は考えています。
このように懐の深い個展では、まさに人それぞれ千差万別に感じられるのではないでしょうか。
ぜひYNKエリアに足を運び、江戸から現代への縦軸で一本化された時空を超えた空間を体感し、生活の中にアートを感じてみてください。
個展概要
・展覧会名:落合陽一個展『昼夜の相代も神仏:鮨ヌル∴鰻ドラゴン/ Divine Duality: Sushi, Null, and the Eel Dragon in Edo’s Cyclical Time and Space」』
・会期:2024年9月7日~ 10月27日
・開館時間:11時~19時(休館日:月曜日)
※月曜日が祝日の場合は開廊し、その翌日は閉廊します。
・会場:BAG-Brillia Art Gallery- 〒104-0031 東京都中央区京橋3丁目6-18 東京建物京橋ビル
・料金:無料