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慶應義塾×データセクション「DSAI STAR Labo」設立、持続可能なAIの実装拠点始動

AIインフラを提供するデータセクション株式会社は、慶應義塾大学のサステイナビリティ実践拠点であるKeio STARとの連携により「持続可能な未来のためのAI」をテーマとした新たな活動拠点「DSAI STAR Labo(ディーエスエーアイ・スター・ラボ)」を設立。

これを記念し、3月3日(火)、慶應義塾大学三田北別館にてオープニングセレモニーおよびメディア向け発表会が開催されました。

同ラボは、AIを単なる技術革新ではなく、社会を安定的に支える「知的基盤」として再定義する拠点として発足。Keio STARの研究力と、データセクションのAIインフラ・社会実装力を融合し、次世代AIからエネルギー、セキュリティ、制度設計までを統合した実装型研究を推進。そして、AIを社会のどこに組み込み、いかに持続可能な基盤へと昇華させるか――その設計思想の確立を使命としています。

発表会には、ラボ設立を記念し、元デンマーク首相/元NATO事務総長アナス・フォー・ラスムセン氏をはじめ、国内外の有識者を招き、AIを国家・社会基盤としていかに設計すべきかが議論されました。

 

持続可能性を”実装”する拠点、Keio STARの構想

発表会当日、Keio STAR共同センター長 蟹江憲史氏より、同センターの概要や今後の活動についての説明がありました。

蟹江氏は、

「Keio STARは再生のための持続可能で変革的な行動を表します。持続可能性は非常に重要ですが、私たちは行動と再生にも焦点を当てたいと考えています。私たちは、目標と目標段階の設定から、持続可能性を達成するためのより厳格な行動へと移行しています。そして今日、Keio STARの傘下にあるこの新しい研究室を発表できることを大変光栄に思います。」

と、ラボ設立への思いをコメント。

また、

「Keio STARとしての目的について、未来を見据え、今日行うべき行動に向けてバックキャスティングと予測を行うことで、私たちは行動を通じて持続可能性に向けたイニシアチブを講じていきます。それが私たちの活動の中核です。」

と述べました。

「私たちは、境界を越えなければなりません。その境界を乗り越えることこそが、私たちの使命です。学術の世界と実社会の現場、その両方を横断することを最初の目的としています。もっとも、アカデミアと実務家のあいだで協働するのは簡単ではありません。そこには少なからず難しさがあります。それでも私たちは、科学的根拠に基づいてサステナビリティを追求しようとする企業と協力しながら、取り組みを進めています。」

と、学術から境界を越えていく意義を説明。

また、

「学問分野の枠を越えて、あらゆる学術的知見を活用することにも挑戦しています。分野横断的に知識を結びつけることは、大学における制度や専門分野の構造そのものに関わる課題であり、研究者にとっても大きな挑戦です。だからこそ私たちは、そうした壁を乗り越えるために、大学の外にいるステークホルダー、いわば外部の力も活用しながら、取り組みを進めようとしています。」

と、外部からの協力を得ることも表明しました。

Keio STARには3つの活動の柱があります。

1つは蟹江氏が担当するSDGsの先を見据えた国際基準の改革を進める「Beyond SDGs」

2つ目は 稲蔭正彦氏が担当するサステナビリティ教育「Keio S-School」

3つめは芦澤美智子氏が担当するイノベーション支援「Keio IOI(Impact Open Innovation Program)」です。

 

DSAI STAR Laboの使命とは

データセクション株式会社 代表取締役社長執行役員CEO 石原紀彦氏からは、慶應義塾との提携理由やDSAI STAR Laboの概要を説明。

本講演は、DSAI STAR Laboの構想と、その背景にある日本のAI戦略上の課題、そして今後の国家的ビジョンを提示するものとなりました。

石原氏はまず、AIがビジネスのみならず、国民生活や国家安全保障にまで影響を及ぼす存在であることを確認した上で、日本の現状に強い危機感を示しました。かつて経済大国として世界をリードした日本は、AI分野、とりわけインフラ領域において、米国や中国に大きく後れを取っています。

その背景には、いわゆる「デジタル赤字」構造があると指摘。

そういった背景を踏まえた上で「AIをどう使うか」ではなく「AIでどうリードするか」と、問いの立て方そのものを変える必要があると強調。

かつての日本は、電力や製造基盤というインフラの上に自動車や電機産業を築き、世界市場を席巻した。しかし、これからの時代は「知能インフラ(Intelligence Infrastructure)」の上に産業を構築すべきだと説きました。

その中核となるのは、大規模GPUクラスター、AIデータセンター、主権的コンピューティング(Sovereign Compute)、信頼できるAIシステムと説明。

DSAIは単なる技術開発組織ではなく、その使命は「日本のインテリジェンス・インフラの設計思想を構築すること」であると、石原氏は位置づけます。

 

基盤モデルではなくフィジカルAIで勝つ、日本再起の戦略

石原氏が日本の強みとして特に強調したのが「フィジカルAI」

AIはクラウド内の情報処理に留まらず、製造業・医療・物理的インフラ・ロボティクスへと拡張しています。

基盤モデルの開発で米国企業(OpenAIやTesla)に追いつくのは現時点では困難だと率直に認めた一方で、日本には高度な製造プロセス、精密な品質管理、自動車産業の技術基盤という強みがあると指摘。

不足しているのは「インフラ」であり、そこを整備すれば、日本の強みとAIを融合できる可能性があるとし、再び日本が世界市場で優位に立てるシナリオとして語りました。

さらに、AIインフラ整備における最大の課題として挙げられたのが「電力」です。データセンターは数百~数千メガワット規模の電力を消費し、グローバル企業は1ギガワット以上の電力確保を進めていて、日本では電力需給が逼迫しているという課題も抱えています。

そのため、AI戦略は単なる技術論ではなく、エネルギー安全保障、水資源管理(冷却)、持続可能なインフラ設計と不可分であると強調。

ここで、慶應義塾大学のサステイナビリティ拠点であるKeio STARとの連携の意義が示されました。AIとサステイナビリティを統合的に扱う拠点として、DSAI STAR Laboが設立されたのです。

石原氏は、同ラボを単なる研究拠点(シンクタンク)ではなく、実装・行動を伴う「アクションタンク」にしたいと語りました。そして、最終的な目標は、「日本を再び世界市場で競争できる国にすること」「国民生活の向上」「国家安全保障能力の強化」であるとし、これらはAIを通じて実現されると語りました。

 

「未来を所有するのは誰か?」元NATO事務総長・ラスムセン氏が講演

その後は、元デンマーク首相・元NATO事務総長のアナス・フォー・ラスムセン氏による「未来を所有するのは誰か?”Who owns the future?” 」と題した基調講演が行われました。

ラスムセン氏は「未来は誰のものか?」と問いかけ、AIが鍵を握るこれからの時代、民主主義の国々が力を合わせるべきだとコメント。

ロシアや中国などの動きに対抗するため、日本とEUが中心となって「D7(Democratic 7)」という協力関係を作ることを提案。技術や自由な暮らしを守り、自分たちの手でより良い未来を築くために、国を超えて団結しようと強く呼びかけました。

 

AIを共生パートナーとして活かす持続可能な未来

データセクション株式会社 代表取締パネルディスカッションには、慶應義塾大学 総合政策学部 教授 古谷知之氏、慶應義塾大学 メディアデザイン研究科 教授 南澤孝太氏のほか、ゲストにサリー大学 ビジネス分析学 特任教授 ユー・ション氏を迎え役社長執行役員CEO 石原紀彦氏「AIと持続可能性(サステナビリティ)」、そしてAIが現実世界で物理的に作用する「フィジカルAI」をテーマに議論。

議論の中で、AIがサプライチェーンの無駄を排除し、環境負荷を低減させる大きな役割が示されました。

さらに、ロボティクスと融合した「フィジカルAI」の可能性についても深く掘り下げられ、身体能力を拡張して障害のある方の活動を支援したり、熟練の職人の技術や感覚をデータとして保存・継承したりすることで、社会全体の持続可能性を高める未来像を提示。

AI自身の電力消費といった課題も挙げられましたが、AIを単なる道具ではなく、人間の可能性を広げ地球環境を守る「共生のパートナー」として活用し、より豊かな未来を築く重要性が伝えられました。

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