乳幼児が感染すると重い肺炎を発症したり、後遺症として喘息になることがある「RSウイルス」に対する妊婦向けのワクチン「アブリスボ®筋注用」が、4月から原則無料の定期接種化されることが発表された。
今回、妊婦向けに定期接種化されるRSウイルスワクチンの重要性や安全性について、産婦人科専門医でTHIRD CLINIC GINZA院長の三輪綾子先生に伺いました。
RSウイルスの危険性とワクチンの仕組み

RSウイルスは、咳・くしゃみによる飛沫感染や、ウイルスが付着した物品を介した接触感染によって広がります。
症状は、鼻水や咳、発熱など風邪に似ており、大人は軽症で済むことが多いため、見過ごされやすい感染症。
しかし、RSウイルスは2歳までにほぼ100%の子どもが感染し、特に生後6ヵ月未満の赤ちゃんに感染すると、細気管支炎や肺炎などの重症化を引き起こすことが少なくないウイルスでもあります。
呼吸困難で入院が必要になるケースもあり、時には命に関わる危険があることも。
実際に、RSウイルスに感染した2歳未満の乳幼児の約4分の1(約3万人)は、入院が必要になるというデータもあるほか、後遺症として喘息になることも懸念されています。
このRSウイルスに対する妊婦向けのワクチンが「アブリスボ®筋注用」で、国内では2024年5月から接種がスタート。

三輪先生は、
「同ワクチンは、妊婦のためのものではなく、出生後に赤ちゃんをRSウイルスから守るための母子免疫ワクチンとなっている。接種することで、胎盤を通じて胎児に抗体が移行する。これによって、出生したその日から、赤ちゃんが気管支炎や肺炎などで重症化するのを防ぐ効果が期待できる。」
と、RSウイルスワクチンの仕組みについて教えてくれました。
妊婦向けにRSウイルスワクチンの定期接種化が実現

これまでRSウイルスワクチンは任意接種(3万円前後)であったため、費用は自己負担となっていました。
しかし、2026年4月から始まる定期接種では、原則無料でワクチンを接種することが可能。
定期接種の対象は28~36週の妊婦の方で、接種は1回のみ。2人目以降の妊娠で再び接種する場合なども対象となります。
三輪先生は今回の定期接種化について、
「RSウイルスは、2歳までにほぼ100%の子どもが感染するにも関わらず、国内では確立した治療薬がなく、小児科医も頭を悩ませていた。その中で昨年、RSウイルスワクチンが発売されたものの、任意接種では妊婦の費用負担が大きく、私のクリニックでも接種を迷っている人が多く見られた。それだけに今回、原則無料でワクチンが定期接種化されることは、妊婦はもちろん産婦人科医、小児科医にとっても待ち望んでいたことであり、私自身もうれしく思っている。」
と、ワクチン接種の無償化でRSウイルスの重症化予防対策が大きく前進すると強調しました。
RSウイルス母子免疫ワクチンの接種に悩んだらかかりつけの産婦人科医に相談しよう!

一方で、妊婦の方にとって気になるのがワクチンの効果と安全性でしょう。
本ワクチンは、世界65か国以上の妊婦さんに使われており、国内外の妊婦を対象とした臨床試験では、ワクチンを妊娠中に接種しておくと、RSウイルスに対する抗体が赤ちゃんに移行するため、赤ちゃんの生後3ヵ月以内での重症化予防効果が81.8%、半年以内でも69.4%にのぼることが実証されています。
※出典:Kampmann et al.(N Engl J Med)
また、妊婦への副反応は接種した部位の痛みや頭痛・筋肉痛など軽微な症状にとどまり、大規模な実世界データを用いて評価した後ろ向きコホート研究でも、早産や妊娠高血圧症候群などのリスク増加は見られなかったそう。
※出典:Maternal safety outcomes of respiratory syncytial vaccination during pregnancy with a large-scale database | npj Vaccines
厚生労働省からの発表でも、早産や死産などの重篤な副反応に関し、重大な懸念は認められないとしている。
※出典:日本産婦人科学会
こうした状況の中で三輪先生は「SNSを通じたワクチン接種に関する誤情報には気をつけてほしい」と訴え、
「RSウイルスワクチンについては、接種部位の痛み(約40%)、発赤、腫れであり、重篤なアナフィラキシーなどの副反応は稀です。妊娠中の接種による胎児への影響は報告されておらず、安全性は確認されています。しかし、SNS上ではワクチンに関するネガティブな情報も多く発信されており、誤情報に惑わされてしまう妊婦も少なくない。もし、RSウイルスワクチンの定期接種に悩んでいたら、かかりつけの産婦人科医に必ず相談してほしい。」
と、アドバイスしてくれました。
これから誕生する赤ちゃんに向けた、一番最初の贈り物。4月は、接種希望者が殺到する可能性も懸念されているようです。
三輪先生も強く推奨するRSウイルスワクチンを、生まれてくる子どものために接種することを検討してみてはいかがでしょうか。
THIRD CLINIC GINZA=https://thirdclinic.jp/
【三輪綾子先生プロフィール】
産婦人科専門医/THIRD CLINIC GINZA院長/東京科学大学客員准教授/
東京産婦人科医会母体保護法委員









