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ランセット・カウントダウンが地球沸騰化時代の到来に警鐘を鳴らす!気候変動と健康に関するセミナーを開催

世界的医学誌「ランセット(The Lancet)」が主宰する気候変動と健康に関する国際共同研究事業である「ランセット・カウントダウン(Lancet Count down)」は2023年12月14日に、日本で初のイベントとなる『Lancet Count down 2023 Japanプレゼンテーション』を開催しました。

本プレゼンテーションには共同主催である、長崎大学 プラネタリーヘルス学環長 教授の渡辺知保氏、東京医科歯科大学 国際健康推進医学分野 教授の藤原武男氏が登壇。

さらには研究の第一線で活躍されている専門家、東京大学大学院 医学系研究科 国際保険政策学の橋爪真弘氏、東京大学 大気海洋研究所 准教授の今田由紀子氏、一般社団法人 みどりのドクターズ代表理事の佐々木隆史氏、シドニー大学 熱と健康 教授のオリー・ジェイ氏による最新の知見の共有が行われました。

 

ランセット・カウントダウンとは

渡辺知保氏よりセミナー開会の挨拶と、ランセット・カウントダウンについてのご挨拶がありました。

ランセット・カウントダウンは2015年から毎年発行されており、分野を超えた国際的な協力を通じて、気候変動がグローバルヘルス(世界の人々の健康)に及ぼす影響を独自に評価しています。

具体的には、5つの主な領域(気候変動による影響・暴露・脆弱性;健康への適応・計画・柔軟性;緩和行動と健康上のコベネフィット;経済と金融;パブリックエンゲージメントと政治的関与)における43の指標を追跡を実施。

そして、ランセットカウント・ダウンは「十分な気候変動対策が取られない場合、過去50年の公衆衛生の進歩を後戻りさせることになる」と警鐘を鳴らしています。

渡辺知保氏は本セミナーでの目的として、特に医療従事者の方々、子供を相手にする医師の方々、子供のケアをする職業の方々や親御さんなど気候変動の問題と健康がどのように結びついているかを知っていただく機会にしたいと語りました。

 

気候変動が健康に与える影響の最新知見

オンラインにて参加されたオリー・ジェイ氏より、ランセット・カウントダウン2023年の最新報告書の共有が行われました。

ランセット・カウントダウンは今年の報告書で8回目となり、2023年の報告書には初めて予測が組み込まれたのだそう。

この報告書は国連規格や大学など52の機関によって製作されており、そして重要なのは幅広く様々な領域の専門家のデータが組み込まれているのだとか。

一方向からの専門的データの報告書ではなく、世界中の機関や専門家の総意と合意によって製作されています。

オリー・ジェイ氏は、人々が暑熱や熱波への曝露によって脅威が高まっていることを強調されていました。

世界で極度の干ばつを受けている陸地面積が、10年間でなんと47%に増えているそうです。

そしてその干ばつによって、世界では中度または重度の食糧不安を抱えている人が1億2700万人も増えたというデータも。

地球の沸騰は食糧不安だけでなく、直接的に人々の健康被害の脅威ともなっており、1986年から2005年と比べて2013年から2022年の熱波の日数は108%も増加しているのです。

暑熱や熱波は、発汗機能が低下してくる「65歳以上の方」や「新生児」には深刻な健康被害を受ける可能性がより強いことにも言及。

オリー・ジェイ氏は気候変動によって経済への影響もあり、なぜなら労働力の低下にも繋がると説明。

熱によっての労働力や労働時間の損失により、中でも屋外作業の職業の方、農業の方が大きな影響を受けているそうです。

この説明を聞いていて私自身も、今年の夏に屋外での仕事があり「こまめな休憩や日中の作業内容の変更などを余儀なくされたこともあったな…。」と思い出しました。

気候変動によっての地球の沸騰は深刻な健康被害だけでなく、私たちのあらゆる生活にも支障をきたしていることが改めて実感出来ました。

そして、現在強まっている健康や生活への影響は「将来起こるかもしれない危険の初期症状」であると警鐘を鳴らしています。

レポート全体で明確なのは「今世界が誤った方向に進んでいる」と示唆しておりました。

最終的に人々が化石燃料から100%離れていく必要があり、排出削減を急ぐ必要があると説明するオリー・ジェイ氏。

しかし、再生可能エネルギーへの転換は低中所得国の人々には今はメリットがなく、メリットとなるのには時間がかかる。

それでも重要なのは健康を中心に据えた気候変動対策であり、これによって豊かな未来をすべての人にもたらすのだとオリー・ジェイ氏は訴えます。

 

我慢ではなく新しい社会への創造

ここからは2023年版のランセット・カウントダウンの報告書をもとに、各専門家の方々からの様々な領域の視座によるディスカッションが行われました。

 

日本での気候変動の影響と取り組み

橋爪真弘氏からは、はじめに日本における気候変動の影響についての知見共有を実施。

異常気象によって食糧供給の影響により、物価の高騰、そして子供の栄養失調のリスクが高まると解析。

暑熱が根源である、熱中症の死亡リスクも高まり、そのうちの8割が高齢者であるのだとか。

そして温暖化対策を実施しなかった場合、熱中症患者の搬送者数は今世紀末にはなんと4.5倍も増えてしまうという予測されています。

さらには日本の平均気温も4.8℃も上昇すると予測されています。約5℃の気温上昇は人々の生活においてあらゆる影響を及ぼすということは、知識のない私でも想像することは難しくありません。

そして気温上昇によって、身体への影響だけでなく「メンタルヘルス」にも大きな影響が出てくると説明。

それは異常気象による災害での怪我、または避難生活・インフラの喪失・食糧不安などによる「精神的健康被害」も及ぼすのだとか。

地球温暖化は直近の数字にも表れているように、これらの影響を緩和していくため「社会全体で全ての人々が取り組んでいく必要がある」と呼びかけました。

 

各専門家によるディスカッション

オンラインにて参加された佐々木隆史氏(画像左)、藤原武男氏(画像右)

佐々木隆史氏は「今年のランセットカウントダウンは22年に比べてメッセージが強く、本当に(気候変動対策を)やっていかなくては間に合わないと感じた。」と感想を述べました。

そしてエコバッグやエコボトルなどを持ち歩く方は多いけれど「取り組みの重要度を上げるのが今の日本では必要だ」と断言。

佐々木氏自身も化石燃料廃止の賛同証明を行うなど、より多くの人が危機感を持つことを呼びかけます。

さらに「1人の患者さんを治療しても、その治療の温室効果ガスで、もう1人の患者を作っているかもしれない」と、以前想像されたことを吐露。

それでも気候変動対策や環境対策には「想像力」が大切であり、想像力には知識や見ることが重要とし、医療現場での自身の体験や実情も社会に発信していくことが必要と説きます。

地球温暖化による異常気象の影響についての研究をされている気象学者の今田由紀子氏は、佐々木隆史氏の調査されたアンケート結果を知り「自身や子供の健康影響についてあまり感じていない」という声が多い結果について言及。

「猛暑に対して温暖化は確実に影響しているというのは発表しているのですが、それを健康影響としてどう捉えているのかというのは気になっていた。私も子供がいるので、子供の影響を想像しながら考えると問題意識が高まるのではないかと感じた」

とコメント。

そして私自身もこの暑さは危険だと感じていたので、子供を暑さにさらさないという考えにいたり、今の段階だと”まだ”適応しようと思えば適応できるとし、ただ子供を守るがばかりに色々な行動のチャンスとして「教育やアクティビティのチャンス」を奪うと説明。

健康被害の影響から、子供を守るために行動制限してしまう損失も大きいと胸中を明かしました。

モデレーターとして参加されている日本医療政策機構 副事務局長の菅原丈二氏も、アンケート結果による国民の健康影響への認識について発言。

熱中症や気候変動の意識は高まりつつあるものの、健康への結び付きがまだまだ認識が弱いとし、

「2030年や2050年など気候変動の予測として出てるが、遠い未来という認識を持っている人もいるのではないかと感じた。私自身も来月子供が生まれる予定であり、平均寿命からいうとちょうど2100年まで生きることが想定される。予測モデルから出されているものがすごく遠い未来ではない」

と呼びかけました。

公衆衛生学で妊婦さんや子供を中心とした研究をされている藤原武男氏の説明によると、日本人の200万人のデータを分析した結果、暑過ぎても寒過ぎても早産のリスクが高まるのだそう。

だから気候変動というのは単に地球が暑くなるという事だけではなく、人々に健康被害があり、子供においては胎児期から影響があると説明。

日本で気候変動対策を推し進めるにあたって、どのように人々に行動をしてもらえばいいのかという議論については以下のように述べています。

「暑かったという実感はあっても、なかなか健康への影響まで結びつかない。だから“65歳以上の高齢者は発汗機能が低下するために、熱中症にかかりやすい”などの具体的な説明をしていくことが大事。」

子供は代謝のメカニズムが未発達で対応しきれない、作物が取れなくなることによる栄養不足による発達の阻害、気候変動による水の汚染や暑熱による行動制限、そして子供のころの気候変動による負荷が高齢者になっても残るそう。

このように具体的に知ってもらうことが健康被害と気候変動への結びつきには重要であると説明しました。

渡辺知保氏は、“2070年には住めなくなってしまう陸地が今の地球の陸地の5分の1に至る”という驚きの予測データを話し、渡辺氏も2070年というと遠い未来ではなく、近々の未来と述べています。

そして最近の漁獲量の変化など、気候変動とは遠いと思っていることが実は密接に関わり合っていると説明し、生態系への影響に関して昆虫の減少についても言及。

「虫が減ることで受粉活動が減り、植物の産高にも影響してくる。そのような形で人間の健康にもゆくゆくは必ず影響がある。」

日本だと環境問題に対して“我慢しなきゃいけない”というネガティブなイメージを持ってしまう方が多いのだそうです。

私自身も環境問題へ取り組むとなると「色々なことを我慢しなくてはいけない」というマインドでいたような気がします。

しかし他の国では「環境を変えることで新しい社会が生まれてくる」というポジティブな考え方をするのだそう。

渡辺氏は言います。

「次世代のための我慢は難しいと思うかもしれない。けれど我慢ではなく【新しい社会への創造】という想像力を持って、気候変動対策に取り組んでもらいたい。」

さらに社会学者の有名な言葉で「3%の人が動き出すと社会全体が動いていく」という言葉があると伝えました。

 

正直に話すと、私は「自分1人がやったところで…。」と思っていました。

それでも今回のランセット・カウントダウンの報告書や様々な専門家の研究内容を共有したことで、考えが改まったように思います。

1人1人が地球の気候変動について重要度を上げて考え、今の子供たちやそのまた後の子供たちの健康や生活を想像すること、そして地球で暮らす全ての人々が健康で豊かな生活を送れるように行動していかなくてはいけないと感じました。

1人1人の行動が新しい社会への創造に繋がるはずです。遠い未来ではなく、豊かな近い未来のために私も出来ることから取り組んでいきたいと思います。

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